××××年××月××日 △△新聞
体に花が咲く?突如発現した奇病
体に咲いた花が徐々に体を蝕んでいく、流した涙が宝石になる──そんな非現実的な病が、突如として現れた。一度に広い範囲で発症することは現時点ではないようだが、患者の数は世界的にじわじわと増えてきている。
前例がなく、世界中の研究者の注目を集めているこの病。治療法もわからず、本人及び周囲への影響も計り知れない。
そこで、国内でも有数の■■病院が専用の病棟をつくり、奇病患者の受け入れを開始するそうだ。
これまでにない、謎に包まれた病である。少しでも早く有効な治療法が見つかることを願う。
ある医師の記録
『私は隔離病棟の医師として働いていた。
しかし、ある日突然、患者と同じような症状が見え始めた。
どうやら私も奇病にかかってしまったようだ。
奇病は、稀ではあるが感染する場合もあるのだろう。』
ある研究者の記録
『隔離病棟で暮らしている患者たちの症状は非科学的で、
発症の条件も、治し方も、全てが謎に包まれている。
僕を含め、様々な研究者が必死になって研究を進めているが、未だ大きな成果は得られていない。
患者の噂話
「この病院の院長の姿を誰も見たことがないっていうけれど、院長自身も奇病患者だって聞いたことがあるわ。」
「あの病室の患者さんね、ぼくの親友だったんだ。
でも、満月の夜を迎える度に記憶を失うらしくてさ。
……もう、ぼくのことなんて忘れちゃった。」
「最初は他の病棟の患者さんだったけど、突然発症して隔離病棟にやってきた患者さんもいるらしいですよ。」
「隔離病棟から退院できた人って、片手で数えられる程度しかいないらしいよ?」
「院長がすべての元凶なんじゃないかって噂を聞いたけど、
まさかねえ。魔法使いじゃあるまいし……」
「どうせ死ぬなら美しく死にたい、っていう誰かの願いを聞いた神さまの仕業じゃないですかね?
いつかみんながこういう幻想的な終わりを迎えるようになれば、素敵だと思います、わたし!」
「私の弟は星が好きでね。
だからなのかなあ。星空みたいな模様が体にできて、
その模様に蝕まれて……死んでしまったの。
でもね。あの子、すごく幸せそうに、笑ってた。」